そんな山吹さんをレイがじっと見つめる。
そして、ウィリスに向き直った。
「ねぇ、貴方、さっき言ったわよね?ここは個室で、ここだけの話だって。」
レイが口角をあげ、にこやかに話をしているのに、恐くて仕方がない。
多分、ウィリスにキレてるんだと思う。
「そう、だから仕返しっていってもミスターセノも芸能人だからね、スキャンダルは気を遣って避けたんだ。さすがでしょ?」
今の現状をわかっていないウィリスが、クスクス笑う。
「へえ、じゃあ私も気を遣ってあげるわ。」
レイがくわえたタバコを右手に挟んだまま、グラスの高級ワインを一気に飲み干した。
多分、あの一杯で3万くらいだと思うけど。
「え?」
ウィリスが首をひねった。
「ねえ、『目には目を歯には歯を』ってしってる?」
そう言って、ゆっくりレイが椅子から立ち上がった。
くわえタバコで。
「え、何?」
「ああ、英語で言うと…『An eye for an eye,and a tooth for a tooth』だったな。」
そう話しながら、ウィリスの席まで歩き、座っているウィリスの横に立った。
「な、なんだっ!?」
苛立つウィリスに、レイは無言で目を細め、くわえていたタバコに指を挟み、旨そうにタバコを吸った。
見とれるくらい、相変わらず格好いい。
だけど、今のウィリスには格好よさに見とれる余裕なんてなく。
ますます苛立ち、声を張り上げた。
「何なんだよっ!」
格好いいけれど、妙な迫力があって、後ろめたい気持ちがあるウィリスには、苛立ちしかない。
大声に、レイが細めていた目をカッ、と開いた。
元々目が大きく、つり目だからそれだけで迫力がある。
「ぁあっ!?何だ、だと?それは、こっちの台詞だ!お前こそ何だ!?一体、何がヤりたい?関係ない人まで巻き込んでっ!お前が腹立ててんのは、将にだろっ?ああっ!?だったら、その引きずりつづけた長年の腐った恨み、直接将に言って、土下座させるなりなんなり自分1人でやれよ!クソがっ!!」
そう怒鳴ると、レイはウィリスの椅子をガンガン蹴った。
レイの啖呵と、怒りのボルテージの上がり具合に、ウィリスはビビり。
「ゃ、ゃめてくれよ~。」
と情けない声をだした。
「あ?何だ?…お前、さっき将が、山吹さん庇って、止めろって言った時、大丈夫だって止めなかっただろ?で、何で私には止めろって言うんだよ?理不尽だよなぁ?・・・・・くっ、大丈夫だ、今蹴ってんのは椅子だから。傷害にはなんないぞ?」
そう言って、ますますガンガン椅子を蹴る、レイ。
完全にキレてる…。
「わかった、わかったよ、もう…仕返しはしないからっ!」
ウィリスが、悲鳴のように叫んだ。
「あ!?仕返ししないってなんだよ、お前の腐った行いがそれですむのかよ?私は済まないぞ?山吹さんまで迷惑かけて、あの2人の関係悪くして、何が気を遣って、だよ、このクソ野郎!!」
レイが蹴りにくいのかヒールを脱いで、ウィリスの椅子の背もたれを勢いをつけて蹴った。
信じられないくらい足があがり、キックが決まる・・・。
その勢いでテーブルにつんのめる、ウィリス。
だけど、それだけじゃおさまらないらしく、レイは短くなったタバコを見て。
ニヤリ、と笑い。
ウィリスの頭のてっぺんにタバコを押し付けた。
ジュッ、という音がして、ウィリスの頭から煙が立ち上った。
「っっっ!!!!ウィリスッ!!頭がもえてるっっ!!!」
俺は叫んだ。
レイ、さすがにこれはまずいだろ!?

