将は私の言葉にため息をついた。
私の性格をよく理解している将は、私の考えを否定できないことを悟っている。
「あれ、奥さんが言ったことには反論しないんだー。」
アランのことには感謝しているけど、やっぱりウィリスって好きになれない。
決して悪党じゃないけど。
まあ、本当に悪意があればカプチーノじゃなくて、さっきべべが絶賛していたシナモントーストにすればもっと匂いは強烈だったし。
カプチーノならシナモンスティックを取り除けば飲めるし。
何て言ったって、15杯っていう微妙な数の多さ。
30杯とか、50杯、100杯とかってキリのいい数になるんじゃないの、普通?
だけど15杯って無理すればどうにかなる数。
それにアランの事だって。
昨日の話を聞いていたんだろうけれど。
もし、プレスとかが沢山いるところで今日のような話をし出したら、大変な騒ぎになっていただろうし。
沢山のカプチーノを片づけるためにそこそこの人数を部屋によんでいたのも想定内だったかもしれない。
アランの登場に騒ぎだす将を取り押さえることができるし。
はあ。
結局…この、ウィリス君って、結構頭がいいやつだ。
だけど。
物凄く、ちっさい男ではあると思うけど。
そんなことを考えていたら。
隣に座る将が、私の手を握り締めた。
「レイは、常に平等なんだ。いくら親しい間柄でも、間違いはきちんと言う。そして、自分も間違えた時は、認める。そういう女だ。くだらない、仕返しとか考える前に、ちゃんと言葉でつたえる。俺はそんなレイを尊敬しているから、これは反論できないんじゃなくて、レイの言葉を受け止めているんだ。」
将の淡々とした声を聞きながら、ああ、私はきちんと将に認められているって、嬉しくなった。
思わず、将の手をぎゅっと握り返した。
途端に、ウィリス君に向けていた表情が一変し、私の方を蕩ける表情で見つめ出した。
う…。
個室でよかった。
将、キャラ崩壊だし。
そんな将を、はいはい、と言いながら木村さんは軽く受け流し。
ベベは、こっちの状況お構いなしに、後からでるパンプキンパイを1つ追加注文していた。
やはり、炭水化物…。
そして、ウィリス君はここで私たちを見て、初めて面白くない顔をした。
「じゃぁ、そろそろ三つ目、いこうかなー?」

