結局三つ目の嫌がらせって、これ?
私は、ホテルの広いレストランの個室で、顔をひきつらせた。
べべは、また美味しいものが食べられると上機嫌で。
将は私の横で、この昼食会の主催者をにらんでいるし。
木村さんは、やっぱカッコいいよなー、とウィリス君のことをみながら呟いていた。
あれから、直ぐにウィリス君から部屋に電話があった。
ウィリス君のところのスタッフと将のスタッフを交えて昼食を一緒にしようと。
将は嫌がったが、ベベが直ぐにOKした(笑)
「これが、三つめの嫌がらせか?」
将が尋ねる。
ストレートな物言いは、苛立っているんだな。
だけど、偶然かも知れないけれど。
このウィリス君のお陰で、アランと話しあえた。
お礼を言いたいけど、将…キレるかな。
そんなことを考えていたら、ウィリス君が。
「そんな簡単に三つ目の嫌がらせはしないよ。」
なんていうから。
将の顔が…。
今日はオリバー監督は別行動で、ウィリス君のスタッフ、多分事務所の男性と、若い20代半ばのヘアメイクの女性、センスのいい40歳くらいの女性、多分スタイリストかな、の3人だけだった。
こちらのスタッフも、木村さん、ベベ、私の3人。
といっても、べべは将のスタッフじゃないけど。
将の空気の重さに比べ、ウィリス君のにこやかさは見事というほど。
これも、仕返しの延長だろうか。
でも、仕返しっていっても彼の場合、誰も傷つけていないしな…どっちかっていうと、子供の嫌がらせみたいな、もの、だよね?
でも、なんて切り出していいかもわからず、会話の糸口が見つからなくて、どうしようかと思っていたけれど。
糸口なんて必要ない大物がいたんだ、うちには。
「えーと、ウィリスだっけ?初めまして、私べリー・Bよ。今日はカプチーノごちそうさま。それにこんな素敵なランチのお誘いも嬉しいわ。ここのランチに出るパンプキンパイ、私すきなの。」
上機嫌なベベ。
やっぱり、炭水化物か。
「ベベッ、ウィリスが俺に何したかわかってるのっ?」
あーあ。
炭水化物最優先のベベに将がキレた。
でも、そんなことで怯むベベではなくて。
「あら、アランは『仕返し』って言っていたけれど、それは将に対しての事だけでしょ?現に、今までの2つは将が嫌な気持になっただけで、私たちに害はないでしょ?そればかりかカプチーノごちそうになって、レイは長年の友人との行き違いを話しあうことができて、和解したし。将以外はお礼を言うべきじゃない?」
ま、確かに炭水化物の女王のいうとおりだ。
だから私も姿勢を正して、頭を下げた。
すると、意外にもウィリス君が驚いた顔をした。
「え、普通自分の夫の肩をもたないかなー?」
まじまじとウィリス君が私の顔を見た。
私は笑いながら当然の事を答えた。
「私は納得できないことには、誰であれ肩はもたない。」

