部屋の空気が一瞬にして、凍った。
と。
べべが、一言。
「残念。」
と、呟いた。
「え?何がです?」
アランがべべに怪訝そうに聞いた。
「何って、貴方が、よ。うーん、ルックスはいいのに中身が残念なんて。」
「えっ?」
「いーい?まだ気持ちが残っていたとしても、秘め事を他人の前でひけらかすような男、残念以外の何者でもないわ。ドン引きよ。貴方、私が保証する!フラれるわね!」
べ、べべ…。
確かに、そうだけれどもっ。
「アラン、少し話そうか。」
ベベの迫力に固まっているアランに、そう声をかけた。
「俺も、話がある。」
将が、私の肩を抱いてそう言った。
まあ、そうだよね。
だけど・・・。
「私も、話がある!」
そう言ってべべが、一歩前へ出た。
は?
「じゃぁー、俺も?話がある、かな…?」
木村さんもニヤニヤ笑いながら、一歩前へでた。
って、べべも木村さんも関係ないし!
話なんてないでしょ!?
しかも、木村さん、疑問系だし!
反論しようとしたけど、べべはスタッフにチェック後の私のドレスの手直しを指示し、部屋から追い出すと、アランに椅子をすすめ、話をする体制を作ってしまった。
はあ。
仕方がない。
私も座った。
もう、単刀直入に言おう。
「私が愛しているのは、将だけ。アランに対しては、友情の好きしかかんじない。これからも。だからごめんなさい。アランの気持ちには応えられない。」
アランが私をじっと見つめた。
悲しい瞳。
「レイ、実は年末に…サラが亡くなったんだ。」
アランの目からは、涙が溢れ出した。
私は、思わず立ち上がってアランを抱き締めた。
「レイッ!?」
将が大きな声を出して私をアランから引き離そうとするけど。
それをべべが止めた。
「アラン、辛かったね…サラも、長い間辛かったと思う。だけど、アランと姉弟だって事誇りに思ってたよ、きっと。」
アランが私に抱きついて、声を上げて泣き出した。
背中をさすってやる。
そうしているうちに、何故かどこかで、犬の唸り声のようなものが聞こえたけど。
犬っていえば、弁慶どうしてるかな…思い出したら会いたくなってきた。
暫くして。
アランが私から離れた。
目は赤いが、涙は止まったようだ。
「ありがとう、レイ。それからごめん。」
アランが私の手をギュッと握りしめた。
「え?」
「レイが俺に友情しか感じていない事もわかってた。だけど、あの中川のクソ野郎はダメだと思った…でも、レイは惚れているみたいだったし。サラの事もあって、側にいてやれないから、あんな言い方したけど。今回、瀬野さんと一緒にいるレイの顔を見て、幸せそうでホッとした。瀬野さんも、凄くレイを大切にしてるみたいだし。安心した…だけど、ちょっと悔しくて。意地悪したくなった。ごめん。」
素直なところは、昔のままだ。
私が素直じゃないから、いつも謝るのはアランで。
素直なアランが大好きだった。
そういえば、泣き虫なところも変わっていない。
「私の方こそ、ごめん。アランの気持ちに応えられないくせに中途半端なことした。」
私がそう言うと、アランが心底驚いた顔をした。
「…嘘みたいだ。そんな素直なレイ、明日は雨か?」
後ろで、べべと木村さんが吹き出した。
失礼なやつらだな。
ムッとした顔でアランを見ると、何故かクスクス笑っている。
「素直になったのも、瀬野さんの影響か…完敗だよ。レイ、幸せにな。」
照れ臭いので、頷くだけ。
「本当は、サラが亡くなったんだってレイに泣きつきたかったんだ。受けとめてくれてありがとな。」
アランの言葉は胸に沁みた。
私は、一瞬泣きそうになった
だけど、アランが最後に爆弾を落としたから引っ込んだ。
「あ、瀬野さんに伝言。嫌がらせはこれで三つのうち二つが終了だから、って。」

