正直驚いた。
まさか、レイがそんなに早くから俺を意識していたなんて。
だって、全く素っ気ない態度で、どうやって振り向かせようか必死で考えていたのに。
「何で、じゃあ、あんなに素っ気ない態度とったかなー。」
両思いと知っていたら、こんなに苦労しなかったのに。
「そ、それは…。」
レイが口ごもった。
「それは?何?」
少し強い口調で聞く。
「だって、恥ずかしかったし、オサムの事もあったし…それに、私は1人で生きていくって決めていたし。」
・・・そういや、そうだったな。
はあ。
何て言ったって、レイは筋金入りの意地っ張りだった…。
「全く…。」
俺は、ため息をつくと、レイのおでこにキスを落とした。
今度はレイがため息をついた。
ん?どうしたんだ?
「・・・・・・で、ここからが本題なんだけど。」
そう言うレイの口調が緊張したものに変わった。
「うん。」
「…アランさ、私の中学校の同級生だったんだ。」
「ああ。」
「中学時代にたった1人の友達だった。」
レイが驚くべき事を口にした。
「え?たった1人って…。」
「私さ、基本的に女友達ってできないし。大体、べったりの付き合いとか…トイレに一緒に行くって意味わかんないし。恋バナってのも無理。クラスの中山君だとか、バスケ部の織田君が素敵とか…もう…。相槌もうてないし。」
そこまで言って、レイがうんざりした顔をした。
そんな会話があって、当時本当にうんざりしてたんだろうな。
レイらしくて笑えるけど。
「…将、なにわらってるの。もう、当時相容れない私に対して、風当たりが強くて、正直うんざりしてたんだ。まあ、男子は比較的、話しやすくて、気もあったんだけど…。」
「だけど、ちょっと仲良くなると告られた、と。」
俺がさらりとそう言うと、レイが驚いた。
「ええっ!何で、わかるのっ!?」
「そんなの、わかるよ。レイは魅力的だし。」
途端にレイの顔が赤くなった。
もう、何でそんなに可愛いんだよ・・・。
「そ、そんなことっ。」
「あるよね?」
「あ、あるけど…。」
ふ、こういうところも、魅力的だって、わからないかなー。
「で?」
「あ、うん。アランはそういうところがなくて、本当に親友って思ってて。だけど、中学3年の夏にアランはフランスに帰ってしまった。」
「それで?」
「うん、で…友達がいなくなって、元気のない私を典幸がフランスへよく遊びに連れて行ってくれて。」
え?あのシスコン、レイ命の典幸さんが?
だって、絶対にアランの気持ちには気がついていただろう?
アランのこと気に入っていたのか?
レイにたずねると、首を横に振った。
「いや、アランに対して、典幸はあんまり…だけど私の初めての友達だったから。」
「え?」
信じられない。
だけど、聞くと事実のようで。
まあ、一切媚びないレイは子供の世界では受け入れられなかったようで。
実際、レイが小学生の時に、イベント好きの典幸さんがはりきって誕生日会を開いてくれたそうだが、レイの友達は1人も参加なしで、結局典幸さんの大学の友達がならんだらしい。
何か想像できる。
「で、私のお母さんが亡くなって、籍のことでショックを受けて、フランスまで1人でアランに会いに行った。」
ああ、その時か…。

