「あのな、レイ。俺、仕事でのラブシーンでは絶対感じない自信あるし。」
「な、何で?だって!?」
「あのな…撮影現場って、……演じる2人だけじゃないんだ。スタッフが何十人もとりかこんでんだよ。で、ただ口くっつけるだけじゃなくて、どの角度でこの女性を綺麗にみせるとか。このシーンは10秒以内でまとめろとか…特にレイとしりあってからは、レイのことを考えながら。致してるし。」
「い、致してるって…。」
「俺さ、露出狂でもないし。だから、完全に仕事なわけ。レイだって、この間、ムッシュージレの奥さんに人口呼吸してただろ?」
「そりゃ、人命がかかっているから…。」
「そりゃそうだけど、横須賀で、戸田さんが具合が悪くなった時だって、必要だったら人口呼吸してただろ?」
俺がそう聞くと、レイはあからさまに嫌な顔をした。
「おえ…。」
「ぶっ。」
想像して本気で気持ち悪くなったようだ。
しばらくして、立ち直ったらしいレイは。
「…まあ、どうしても、必要なら…する。」
レイの気持ちを口にした。
本当に嫌そうな顔だけど。
でも、人命第一。
俺は、レイをしっかりみつめた。
「人口呼吸をして、キスをしてるって思うか?」
「は?」
レイがあり得ないという顔をした。
ふ。
「俺も、同じ。撮影のキスはキスじゃない。本当のキスは、俺にとって、これだけ…。」
そう言って、俺はレイに深い口づけをした。
心を込めて・・・。
しばらくして、唇を外すと、レイがトロンとした表情をしていた。
「感じた?これが、本当のキスだ。レイだって、そうだろ?」
耳元で囁くと、レイが頷く。
それを確認してホッとする。
そして、レイが口を開いた。
「アランのこと、説明していい?」
俺は、ため息をついた。
あんまり、聞きたくはない。
だけど、気になるのも本当で。
「じゃあ、ベッドで話そう。」
そう言って、レイを抱き上げ、ベッドに入った。
お互いのバスローブを取った。
肌をくっつけて、横たわる。
「話して。」

