将と睨みあっていたのは。

将と同じくらいの長身で。

かなりのイケメン。

将とタイプが少し被るような、大人っぽい感じ。

顔は東洋人…。

だけど、何となく雰囲気っていうか、ファッションが日本人ではない。



「ハーイ、ミスターセノ!ご無沙汰だねー!」


訛りのある日本語で、将に話しかけてきた。


「ウィリス、君もノミネートされたんだってね。」


うわ、将の声が低い。

これって、将かなり機嫌悪い。

ウィリスって男が、私を見て、いい助っ人連れてきたねー、と嫌みっぽく言いやがった。

ああ。

わかった。

こいつ、生理的に将は嫌いなんだ。

キャラ的には被るけど、将をいやらしく、嫌な男にしたらこういうタイプになる、ってサンプルみたいなもんだ。

へー。


「助っ人じゃない。俺の妻で、最愛のパートナーだ。」


将がムッとする。


ふーん。


「将の妻の、瀬野レイです。初めまして。将、どなた?紹介して?」


だから、面とむかって応対してみようと思った。

今までの私なら、こんな事面倒でスルーしていたけれど。

将の事だし、スルーしてられない。

だけど、将はムッとして。


「レイ、別に紹介するほどのやつじゃない。」


と、ピシャリ。

よっぽど嫌いなんだな。

でも、ウィリスは気にもせず、ヘラヘラして、話しかけてきた。


「やだなー、ミスターセノ。まだハリウッドのオリバー監督のオーディションで、俺が役を勝ち取っちゃったこと根に持ってるんだー。しかも、それが今回のノミネート作品だからねー。あ、初めまして。ジョン・サトシ・ウィリスです。日系アメリカ人だけど、ハイスクールは、日本で通って、ミスターセノと同級生なんだ。だけど、本当にビューティフルだねー、よろしく。あ、レイって呼んでいいかな?」


そう言って、ウィリスは私に手を差し出した。


げ。

つまりは、将と腐れ縁ってやつ?

やだな、こんないやらしいやつと腐れ縁なんて。

私は、差し出された手を無視し、丁寧に頭を下げた。


「ミセスセノ、あるいは、瀬野さんで。お願いします。」


と言ってやった。

ウィリスはちょっとその態度に鼻白んだが、すぐにニヤニヤしながら将に向き直った。


「だけど、宣伝効果ねらったねー。オリバー監督は世界的に有名だからいいけど、そっちの監督は無名だしねー。」


うわ嫌な奴だ、マジで。