そこへ木村さんが、もう本当に時間がありませんので!と声をかけてきた。

確かに、10分のはずが、20分たっていた。


本当にまずい。



「レイ、本当に時間がない。いくよ。」



俺は、じゃあ、行ってきます、とレポーターに言って頭をさげた。

だけど、レイは。

西村に向かった。



「私が、貴女に言いたかったのは貴女の質問に怒ったわけじゃなく、約束を守らない上に、公共の場で他の人の迷惑になるようなことをしてほしくないということです。」


「め、迷惑って…。」


「ここには、色々な人がいます。色々な事情があって海外へ行ったり、戻ってきたり。」


「別に私は!」




反論しようとした西村を視線で制して、レイはその視線を俺達がいる通路の少し先に向けた。




「あ…。」




そこには、喪服の集団がいた。


どういう理由かわからないが、皆、悲しみに沈んだ表情をしている。


そういうことか。


ここにいる全員が、レイの行動を理解した。


悲しげな彼らの前で騒々しくしたくなかったから、随分手前の彼らから目につかないところで、わざわざ取材を受けたんだ。





「瀬野さん、ノミネートおめでとうございます!気をつけて行ってらっしゃい!奥さまも!」



男性レポーターがそこで立ち止まり、手を振った。


それにならい他のレポーターも。


ここで取材を止めるということか。


レイの気持ちが皆に伝わったんだ。



俺とレイはホッとして、頭を下げて歩き出した。



やっぱり、レイはスゲー。