だけど、木村さんが何かに気がついたようだ。
「ああ、レイちゃん、そういうことか…。」
そう言うと、木村さんは取材陣に反対側のコーナーで、と場所を指定し始めた。
そして、インタビューに10分間応じるので、取材はここまでにしてほしいとキツイ口調で要求を出した。
え、何なんだ?
マスコミも俺と同じ気持ちらしく、怪訝な顔をしている。
だけど、時間がないのでとりあえずインタビューをすることになった。
俺とレイが並びレポーターが俺たちを取り囲んだ。
レイの目の前には先ほど失礼な質問をした、レポーターが立った。
俺はムッとしたが、レイは全然気にもしていないようだ。
「さて、瀬野さん。ご結婚おめでとうございます。奥さまを紹介していただけますか?」
なじみの、年配の女性レポーターが笑顔でマイクを向けてきた。
「はい。ありがとうございます。妻のレイです。」
レイが頭を下げた。
「お綺麗な方ですねー。先日発表になった、『ベリー・B』の新展開のモデルさんですよね?」
「はい。妻は大学の准教授であり、医者なんですが、友人のベリー・Bからどうしてもという依頼がありまして、モデルをひきうけたんです。ただ、本業が多忙なので、写真のみの露出になります。」
ベリー・Bが先日新展開の発表をNYで行った時に同じことを言ったのだが、ここは日本だ。
誤解のないように、もう一度伝えておく。
なるほどー、と声があがった。
そして、あちこちからや次は次の質問がはじまった。
―――お互いになんて呼び合っているんですか?
「俺が、レイで。彼女が将、って呼んでいます。」
―――今回、フランスに同行されますが、奥さまは今どんな気持ちですか?
「将にとって、いい経験ができるといいなと思います。そのために、私で役に立つことがあれば協力したいな、と思っています。」
―――瀬野さんにとって、今回このように奥さまと映画祭にでられることについてどんなお気持ちですか?
「初めての場所で、妻を伴って行けると言うことは、精神的な面でかなり心強いです。」
いい雰囲気で、インタビューが続いた。

