はああぁぁぁ。


その姿を見た瞬間。

大きなため息と、ともに…。

「何で、典幸が泣いてんのよ。アホじゃない?」

相変わらず、その優しい心とは裏腹の毒を吐くのは。

純白の、シンプルなベリー・Bのドレスを纏った、最愛の妹。


本当に――


「綺麗だ…レイ。うううっっ。」


もう、なんて言っていいのかわからないほど、感極まってきた。


父さんと美景さんは籍は入っていなかったが、普通に一緒に住んでいて。

だから俺も、3歳の時から一緒に住んでいた。

そして、俺が小学3年の時に、レイが生まれて。

生まれた時から、レイは信じられないくらい綺麗な子だった。

もう、可愛くて、可愛くて。

自慢の妹で。

凄く仲のいい、兄妹だった。

本当に仲のいい、4人家族だった。

美景さんが亡くなるまで――


レイには不憫な思いをさせたと思う。

だからこそ、幸せになってほしい。

将君のことはよく知っているが、真面目で凄くイイやつだ。

何て言ったって、夕真ちゃんをマジで好きだったんだから。

それも、決して夕真ちゃんの外見の魅力だけではなくて、内面を見て好きになったんだから。

同じ夕真ちゃんファンとして、将君には一目置いていたし。

ああ、夕真ちゃんの話じゃなくて、レイのことだ。

そうそう。

何しろ、この筋金入りの意地っ張りが甘えられる男なんだから。

間違いない。


だけど、少し…寂いしい。

あ、また涙が…。

レイがティッシュの箱を投げつけてきた。

また、照れかくしだ。

照れているときほど、ぶっきらぼうな態度をする。

ふふ、本当に可愛いよな。

俺がクスリと笑ったら、レイがむっ、とした。



「典幸、鼻水きたないから、早くふいてっ。」


…照れ隠しだけど、もうちょっと言いようがあるだろ。


「・・・レイ、お兄ちゃんに、今までありがとう、とかないのか?」


ちょっとからかってみようか。

レイが落ち着かないのか、タバコを咥えた。

その姿でこちらを振り向く。


「あ?」


って、それ花嫁の態度じゃないよな…。


「何で、典幸にお礼なのよ。父さんはどうした?」

「あー、何か、レイの花嫁姿見たら泣くって…。新婦入場の時まで会わないって、ずっとトイレだ。」


そう言うと、レイがため息をついた。


咥えタバコで。