船津さんに諭され、降板する方向で考えていた木村さんが折れて。
気分転換にと、昔撮影所があったという跡地の公園近くにある、『映画歓』という映画関係の書籍や資料等がそろっている店にやって来た。
店主の瀬古さんと船津さんは古い知り合いで、船津さんに俺はこの店を紹介してもらって今ではすっかりここの常連となっている。
「将、さすがに袖搦(そでがらみ)の資料は取り寄せるのに4、5日かかるみたいだぞ?どうする?事務所の方に直接送ってもらうか?」
欲しいと頼んだ資料を探してくれたようで、店主の瀬古さんとパソコンを覗き込みながら、木村さんが俺に聞いてきた。
俺は50年くらい前の『義経記』という映画の宣伝用ポスターから視線を木村さんに向けると、ほほ笑んだ。
「あったんですね?ありがとうございます。大船は鎌倉へ帰る途中だし、俺帰りにとりに来ますから。事務所に送り直すんじゃ、時間がかかりますよね?」
この店がある大船は、東京から鎌倉へ帰る途中に位置している。
ちなみに瀬古さんは鎌倉をとおりこして厨子に自宅がある。
「だけど、弁慶が瀬野さんで、義経が藍崎さんなんて、意外性を狙ったのかな?でも、お2人とも女性に絶大な人気のあるイケメン俳優さんだから、色っぽい作品になるでしょうね?」
瀬古さんの言葉に、俺は曖昧に頷いた。

