席にもどり、俺はレイに笑顔をむけた。
「仕返しのしあいなんて、何だか嫌なもんだよな。レイ、よくもうしない、って言ってくれたよ。何だかホッとした。」
元来俺は、いがみ合いや争い事が嫌いだ。
だから正直レイの言葉にホッとした。
まあ、ウィリスも反省したみたいだし。
だけど、そんな俺の平和な言葉にレイが眉間にシワを寄せた。
「何言ってんの?私しないなんて言っていない。」
「え?」
「『もうこれでない』って言ったの。」
「え、じゃあ…仕返しは…。」
「するに、決まってるでしょ?きっちりと。今仕込んできたから。あともうちょい待ってればわかる。あ、前もって言っておくけど。登壇する時、あんまりウィリス君の側に行かない方がいい。」
レイの笑顔が黒いのは、気のせいじゃないよな。
俺は、恐ろしくてもうそれ以上詳しい事は聞けなかった。
多分、隣で話を聞いていたいやに無口になっている木村さんも、同じだったと思う。
だけど、何事も起こらないまま、最優秀賞の表彰も終わり。
受賞関係者全員が再び登壇する事になった。
レイの言うとおり、写真撮影は、ウィリスから離れた端にレイと2人立った。
今回はメイン受賞じゃない。
まだ、俺は世界の中でこの位置だと思う。
いや、やっと…端に立てる事ができたんだと思う。
今後頑張って、真ん中に立って下さいと周りから声がかかるようになりたい。
そんなことを思いながら、ウィリスを見ると。
…やつは、真ん中に近い場所にいる。
「あいつ、本物のバカだ。」
見も蓋もないことをレイが言う。
俺も同意見だけど(笑)
その時。
中央の方で、批難の声が上がった。
「よし、きた。」
小さい声でレイが呟いた。
「え?」

