「ってかんじで、今日は檜佐木先輩とあかりは来ないよー」

「了解」

涼ちゃんはもぐもぐと菓子パンを口に運ぶ。

私もその隣でウィダーインゼリーをちゅうちゅうと吸う。
今日はリンゴ味。
ゼリー特有の食品添加物っぽい味が口いっぱいに広がる。

「なぁ、それうまいの?」

「ん?不味くはないよー」

「っつーか、よくそれで足りんな」

「涼ちゃんみたいに大食いじゃないですし」

「いや、お前が少食で偏食なだけだろ。毎年、暑くなるとこれだから遥はダメなんだよ」

「別にダメじゃないもーん」

「いや、お前こないだ倒れたろ。メグが心配してたぞ?」

「メグが心配性なの!!」

そう、メグが心配性なだけなのだ。
ちょっと貧血で倒れたくらいで騒ぐからいけない。
涼ちゃんだったら『またか』って言って担いで帰ってくれたのに、メグは救急車呼んじゃうし。
びっくりしたのは私の方だ。
目が覚めたら病院とか本当に勘弁して欲しい。


「あー……、アイス食いたい」

「唐突だね」

「よし、食堂行って買ってくる!!」

「まだ入るの!?」

「全然余裕」

本当、涼ちゃんの食欲には呆れる。
さっきの菓子パンだっておばさんのお手製弁当(超特大サイズ)を早弁したが為に購買でかったものなのに。
……きっと胃袋がブラックホールに繋がってるんだ。うん。
まぁ、運動やってるっていうのもあるのかな。涼ちゃん、バスケ部だし。


……想像してたら気持ち悪くなってきた。ので、腰掛けていたベッドにダイブ。

こういうとき涼ちゃんが職権乱用してくれててよかったなーと思う。
涼ちゃんは保険委員長だから勝手に保健室を解錠してくれている。

保健の先生も涼ちゃんと仲良しだから『まぁ、いいか』とか言ってるし。
それでいいのかって思うけど、今はそれに感謝。