ヴァンタン・二十歳の誕生日

 朝になる。
やっと長かった漆黒の闇から解放される朝になる。

チビはもうベッドに居なかった。


(流石に小学生は朝が早いわ)

自分の十年前のことなのに、もうすっかり忘れ去っていた私。


だから……
暫くはそのままで居たかった。

チビと過ごした冒険の余韻を感じて居たかった。




 「ママー、お腹が空いたよ」

寝ぼけ眼でダイニングに向かった。


「あれっ何時から甘えん坊さんになったのかな?」

母が笑っていた。


(あちゃー、そうだった! 此処は過去の世界だった一)


私はタイムスリップしたことも忘れていのだ。


私はことの重大性に気付き、慌てて姿を隠した。


(でも今更もう遅いんだよね)

私は覚悟を決めて母と向き合った。




 「何隠れているの?」
母はまだ笑っていた。


「悪い夢でも見た?」

そう言いながら、母の顔が近付いて来る。


「ホラ、早くしないと大学に遅れちゃうよ」


(―えっ!?)
と思った。


「あれっ私……お母さん私誰?」


「何馬鹿言ってるの?」
母はもっと笑い出した。


「私の大事なエイミー。お誕生日おめでとう。ジョーさん達によろしくね」


(えっ!?)
私は又固まった。


「ママ……私エイミーでいいの?」

母は真剣な眼差しで私に向き合い……、何度も頷きながらとびっきりの笑顔をくれた。




 雅は約束の場所にいた。

午後七時。
私の誕生日パーティーが始まる。


初めて飲んだカクテルに、大人……って感じた。


伝説の聖女がなれなかったヴァンタン。
今、私はその中を生きている。


エイミー姉さんの分も生き抜くために。


「ベス……メグ……そしてジョーありがとう。私本物のエイミーに昨日なっていたのよ」
でも三姉妹? に解るはずはなかった。


「あのね。私にお姉さんがいて、その名前がエイミーだったのよ。驚いたわ。でも夢だったんだけどね」


(そう夢だったんだ。パパは助かったのかな?)

物凄く不安だった。


(ねえパパ? 今何処に居るの?)




 私は泣いていた。


「エイミー? それマジ? だって日本人にエイミーは似合わないよ」

私の気も知らないで雅が言う。


「そりゃそうだ。やはり夢は夢だったか」
私は笑い出した。


「エイミーにはやっぱり笑顔が似合うよ」
メグとベスが同時に言う。


「流石仲良し四姉妹!」
雅がそう言いながらスクラムを組む。
私は優しさ溢れる姉妹達の心意気に泣いていた。