ヴァンタン・二十歳の誕生日

 (反射した満月の光がきっと魔法の鏡に入ったんだ。だからキャプテンバッドは彼処に居たのか? でもそれならキャプテンバッドは元々家にいたの?)

そう考えつつ頭を振る。


(イヤ違う、もしかしたら元々合わせ鏡の中に居たのかも知れない。パパが見つけて開かせたことによって封印が解き放されたのかも知れない)


頭の中を混がらがせながらも私精一杯考えた。




 (魔法の鏡は屋根裏にやはり置いてあったんだ。 母が移動させた後、私が又其処に置いた。だからずっと屋根裏部屋に置いてあったものだと思ったのだ。だから私はずっと屋根裏を探したんだ)


心を落ち着かせるために、蛍光灯を消してみた。



 私はふと、屋根裏部屋が気になった。
私同様、アンやハイジに憧れたと言う母。
その思いを死産させられた娘に託した。


私はエイミー姉さんをもう一度肌で感じたかった。


戦いの最中。
私の見た伝説の聖女。
あれは確かにエイミー姉さんだった。


キャプテンバッドを操ったのは、エイミー姉さんを死産させた悪魔なのだろう。

伝説の聖女はキャプテンバッドの祖国の人の陰謀に負けて、異端人として処刑されたのだから。

自国が魔力で負けたと印象付ける。
たったそれだけの理由で……


火炙りの刑は、復活してほしくないと願うエゴから来たものだった。


その聖女が、遂に復活しようとしていた。

それを止めるために、母を死産に追い込んだのだった。


もう其処にガラスの小箱はなかった。
私は取り返しのつかないことをしたと思った。




 (エイミー姉さん私を許して!)

私はエイミー姉さんの為のベッドの上で泣き崩れた。





 その聖女は私と同じ十九歳だった。
だから私は選ばれたのか?

私を二十歳にさせないために。


イヤ私は二十歳になってやる。
絶対になってやる。


パパが言ってたヴァンタンと言う言葉に相応しいおしとやかな女性になるために。


(おしとやか? 私になれるだろうか?)

一瞬笑いたくなった。




 屋根裏部屋のベッドは暖かだった。
肌の温もり……
それを感じた。


「エイミー姉さん……」
私はもう一度名前を呼んでみた。

その時トップライドから満月が見えた。


私は怖くなった。
もうスーパーヒロインではないようだった。


私はその名前をエイミー姉さんに預けて、子供部屋に戻った。