ヴァンタン・二十歳の誕生日

 私達はやっと家に戻ってきた。


(もしかしたらパパはとっくに家に帰って来ていて……)

そんな思いを抱きながら急いで玄関へと向かった。


でも……
現実の世界に、パパは居なかった。


あの人は再び玄関へは入らず、雅の待つ家へと戻って行った。

結局……
何のために彼処に居たのかも聞けず終いだった。
それでも、私の心の中には深く思い出として刻まれることになったのだ。


私はあの時、ヒロインだった。

でもそれは本当はエイミー姉さんで、私にとってはあの人こそがヒーローだったのだ。


雅が最近フェンシングにハマって、応援に良く駆り出されていた。


(何処かで見た)

確かにそう思った。
それをやっと思い出せた。


記憶の中に埋もれていたパパとあの人を……


胸がキューンとした。

そして……
又恋が始まる予感に震えた。




 再び戻った屋根裏部屋の中にも……、パパの姿はなかった。

あの激しい戦いは何だったんだ!


私は床に突っ伏して泣いていた。


虚しかった。
だってこの部屋にはチビと私だけ……


私は泣きながら屋根裏部屋から出て、チビと一緒にベッドに潜り込んだ。




 (置いてきた手鏡を探しにチビも出発するのかな?)

本当はこれで終わりにしてほしかった。
あどけなく笑うチビに苦労だけはして貰いたくはなかった。


(あれっ!? 私がタイムスリップした時、合わせ鏡はチビの部屋にあった……えっ!? どうなってるの? )


私はあの時、チビの枕元にあるパパのお土産に気付いた。


そう……
お伽話に出てくる魔法の鏡をねだった時、パパが苦し紛れに置いていってくれた手鏡。


私は本当にあれで良かったのに……

パパのことを苦しめ、あの闇の世界に閉じ込めてしまったらしい。

私はその時にあの小さな手鏡を忘れたことに気付いたのだ。


あの時は確かに、魔法の鏡の中で遊んでいた時、落とした物だと思っていたのだ。




 『この鏡は何処に置いてあった?』


『チビ……ううん私の部屋だけど……』

あの幽霊船の中で、妙な事をパパは聞くなと思いながらも私は素直に答えた。


タイムスリップした時、確かにチビの枕元に置いてあったからだ。


『その前に屋根裏部屋に置いて無かった?』

それを聞いて、そんな事実もあったことを思い出した。