ヴァンタン・二十歳の誕生日

 そして船が港に着く。

私は着岸することばかりに気を取られていた。

パパの腕を信じられない訳ではない。

でも、水が怖かった。

泳げない事実を思い出したからだっだ。




 でもその時には、操舵室からパパの姿は消えていた。


「パパーー!!」
私達は泣きながら船の中を探し回った。
それでもパパの姿は何処にもなかった。


私は操舵室に残されていた合わせ鏡を手に取った。


「パパーー!!」
もう一度思い切り呼んでみた。

でもパパの声は聞こえて来なかった。




 私達は泣きながら魔法の鏡を目指した。

手掛かりは合わせ鏡。
その映像の頂点を目指すことだった。


その先にある我が家を目指して。




 どうやって海に行ったのかも解らない。
どうやって家に戻ったのかも解らない。

でも三人は戻って来た。
懐かしい我が家に……


あの人と屋根裏部屋を目指す。
必死に目指す。


其処にある筈の出口を目指す。


やっとたどり着いた……

その安堵感に私は震えていた。




 目の前の鏡に乙女の鮮血を捧げた。


チビと私の目の前で、鏡が再生していく。


(パパ……これで良いんだよね? パパ早く来てー!)

私はパパを待つつもりだった。
でも、骸骨が迫っていた。


私達は仕方なく、鏡を抜け出す準備をした。




 「やるしかない!」
私は二人に声を掛けた。


「解ってる。遣るだけ遣ろう」


私は骸骨が攻めて来られないように、合わせ鏡を魔法の鏡の映像を写す工夫をした。


反射する物なら何でも良かった。
私は鏡から手を出して支えにしていたガラスの小箱を取り、頂点に来るように置いた。


(エイミー姉さん私を許して……。―決してお姉さんを忘れるためなんかじゃない……。パパを助けるために……)


でも、本当は私は解っていた。

自分が助かりたいのだと言う事が……

あの骸骨の襲来から……
自分の身を守る為に……




 (十年後……きっとチビは思い出す。パパのことを……。それまで待っていてエイミー姉さん)

私はそう思いながら、合わせ鏡とガラスの小箱をセットしていた。


(大丈夫。チビならきっと……。きっとエイミー姉さんも助け出してくれる)

私はそう自分に言い聞かせた。