ヴァンタン・二十歳の誕生日

 「鏡が……ヒビ割れてる!?」

パパが叫んだ。


「でも、乙女の鮮血で甦るのね? でも一体誰の血なのかな?」

私は思わず自分の手首を見つめた。


(もしかしたら死ねってこと!?)

私は血の流れる手首を想像して顔を青くしていた。




 「パパ達は公海上であの幽霊船に出会ったんだ」


「キャプテンバッドの幽霊船?」


「そして其処の宝物こそが魔法の鏡だった」


「もしかしたらその鏡にキャプテンバッドの魂が宿っていたとか?」


「ああそうらしい。そのためにこんな目にあった」


(違うよパパ。悪いのは私だよ。そうだ。私が魔法の鏡が欲しいなんて言わなかったら……パパを苦しめことはなかった!)




 動き始めたキャプテンバッドの骸骨を何とか一蹴した。

私はキャプテンバッドがひるんでいる隙に操舵室から脱出した。


魔法の鏡の現し方はさっき知った。
私は合わせ鏡でもう一つの鏡を作り出した。


この鏡を再生するためには、清らかな乙女の血が必要不可欠なのだ。


私は知っていた。
知っていたはずだった。
だから女子会専門だったのか?


(そうだ全てはパパを助けるためだったんだ)


高校から大学まで全て女子校を選んだ。
だから敢えてレベルの高い学校を選んだのだろう。


受験勉強に没頭することで、恋愛感情を持ち合わせないために……

本当は好きな人がいた。

それは雅のお兄さん……


(えっ!? 雅のお兄さん?)


『ウチの兄知らない?』

さっきのあのメールが気になる。


(雅のお兄さん今何処にいるのだろう?)




 其処へ又骸骨が攻撃してきた。
不意を突かれて……

無防備だった私には相当ショックだった。


思わず、クロスペンダントを手にしていた。



(パパ、絶対にママに待っている家に連れて帰るからね)

私は心の中で叫んでいた。




 それでも骸骨が恐ろしくて、逃げて逃げて逃げまくった。
頭の中では解っていた。
壊れた鏡を再生しないと、元の世界に戻れないことを。


そのために私の血が必要なことも。

でもやはり骸骨達怖かった。


「あっあー!?」
私は頭を抱えた。


パパを守ろうとしていた筈だった……
でも私逃げ出していた。


(何故逃げたの!?)

自問自答しながら、パパを見た。


でもパパはまだ諦めていなかった。
チビもパパの傍で戦っていた。