ヴァンタン・二十歳の誕生日

 ――ビューン!!

サーベルが唸る。


「突け!」
パパが叫ぶ。


「パパ!!」
その声に思わず振り向いき、たまらずに叫んだ。


パパは必死に足かせを引きずりながら甲板に向かう階段を上っていた。


私は泣いた。

そしてもう一度、覚悟を決める。


(パパのために頑張ろう。チビのために頑張ろう。母のために頑張ろう。そして誰よりも私自身のために頑張ろう)

これからの人生を後悔したくなかった。




 そして私は骸骨をサーベルで突く。


「ファンデヴー!」

チビも一緒になって突く。


チビっ子選手として幾度かの試合に参戦した。


チビは面白がっていた。


(どんな神経してるの?)

でもそれは今も未熟だった私の葛藤。


(遣るっきゃない!)

そう覚悟を決めた。


「マルシェ!」
一歩前へ出ながら私も叫んでいた。




 次々と襲ってくる骸骨。
立ち向かいながら私が見たのは、妙に楽しそうなチビだった。


玩具かマリオットとでも思っているのか……

巧みな剣さばきで私を唖然とさせる。


(でも、上手い!)

もし両手が自由に使えていたら、拍手喝采をおくっただろう。


私もチビに負けまいとサーベルを構えた。




 「マルシェ!」
前へ前へとチビが強気で行く。


「ロンペ!」
パパも叫んでいた。


「後ろへ下がって間合いをみるのも大事な駆け引きだ!」

私とチビは目配せをしながら、徐々に戦い易い場所に移動していた。


「ボンナリェール!」
チビが後ろへ飛んだ。


「ホンナバン!」
私は前へ飛んだ。

パパに教えてもらった通りに戦いたかった。
でもそんな正統派の理屈が通るはずがなかった。


骸骨達は縦横無尽に攻めて来る。


(来るなら来い!!)

私はもう一度フレンチに握った。




 テーマパークのアトラクションだと思っていた。


そうだ思い出した。
前にパイレーツ何とかってのに行ったことがある。


だからチビはあんなに楽しうなんだ。


(お・ね・え・さん。私もあの時こんなだった? お・ね・え・さん誤ります。だから力を貸して……)

私は剣を高く掲げた。




 魔法の鏡に魅入られたキャプテンバッド。
鏡に満月が当たる時に復活する。

キャプテンバッドと同じように……

負けたら私も生きる屍となるのだろうか?


(お・ね・え・さん。私達生きて帰れるのかな?)

凄く凄く不安になった。