私は覚悟を決めた。

此処から逃れて又家族一緒に生活する為に、武器になる物を目で探した。

魔力によって又蘇ってきそうだけど、骸骨を壊す位だったら棍棒でも良い筈だと思った。


幸い?
サーベルや太刀は此処へたどり着くまでに沢山あるのは確認していた。


それにしてもあれは不思議な光景だった。

ごく普通のクルーズ船に、大量の武器など必要ない筈なのに……


私はこれが何を意味しているのかをまだ知らずにいた。




 屋根裏部屋のトップライトからの月の光が、徐々に魔法の鏡を照らし出していた。

当たり前の事だけど、私は鏡をそのままにしていた。

そうしないと、戻れる事が出来なくなるからだった。


でもその日は満月だった。

偶然か……
必然か……

いやきっと初めから仕組まれていたのだった。


満月で変化する狼男。
そのとてつもないバイタリティ。

それはまさに魔の仕業だと言っても過言ではない。

そんな月の力が魔法の鏡を支配しようとしていた。


月の光……

満月の光には……

とてつもないパワーが秘められてはいたのだった。


私達は増幅されたムーンライトのビームによって、鏡の中に閉じ込められかけていたのだった。


それは悪魔に魂を売った、魔法の鏡の作者の執念だった。


お伽話に出てくる魔法の鏡ではなかった。


同じ作者の作品……

いわば姉妹と言わざるべき鏡だったのだ。


チビと私、異姉妹に相応しい収監場。


この鏡の世界に閉じ込める事で、地獄絵巻を完成させようとしていたのだった。


かつてその魔力でパパを閉じ込めた時のように。



 そして遂に……

魔法の鏡に亀裂が入り、徐々に広がる。

まさにムーンライトビームのパワーだった。


それは月の光を更に増幅させる。
そう、まるでプリズムのように……


その時。
合わせ鏡がコラボした。

満月の光が三角形の頂点を表すかのように、魔法の鏡を操舵室の窓ガラスに映し出したのだった。


「ゲッ!?」
パパがイヤな音を出した。


「何パパ?」
私はパパを見詰めた。

パパは操舵室の窓を指差していた。


「鏡が……魔法の鏡がヒビ割れてる……」
驚きの声を上げた私。
訳が解らずボーっとしていた。


「帰る場所がなくなる!」

私はパパの一言で、やっと事の重大性に気が付いた。