ヴァンタン・二十歳の誕生日

 悪名高きキャプテンバッド。
それがこの船の最高実力者。


『神出鬼没。
その言葉はこの海賊の為にある』

そうパパが言っていた。


世界一凶悪な海賊。
キャプテンバッド。


(きっとこの船の何処かに隠れていて、私達を見張っている)

私はそう思っていた。


でもキャプテンバッドは、二十世紀前半に死亡していた筈だった。


(って言う事は、チビの言う通り幽霊船なのか?)


死してなお、暗黒の海を漂い続けるキャプテンバット。


彼の愛船は幽霊船となり、彼の御霊と航海しているのだろう。

それがきっとこの船で、私な感じている恐怖の全てなのだろう。




 パパからキャプテンバッドの戦い方を聞いたことがあった。


(思い出した……。確か数を少なく見せかけて、油断した隙に一気に攻撃を仕掛ける。んだった。そうか!? だから隠れて私達を見張っているのか?)

私は一人で震え上がっていた。




 「もうこうなったら仕方ない!」
私は覚悟を決めた。


キャプテンバッドの遺体探しから始める事にして、船長室から捜索を開始した。


でも何処にもそんな物はなかった。


船内の奥の奥にも骸骨はなかった。

やはり幽霊船なのだろうか?


「やっぱり幽霊船かな?」

私はチビに声をかけた。

でも幾ら待っても返事が無かった。

私は心配になって、チビを見た。


でもチビはそんなことはお構いなしで又眠っていた。




 チビを抱いて船底をもう一度捜索する。

外では舵柄が不気味な音を出していた。


(みんな何処へ行ったのだろう?)


後甲板下のキャプテンバッドの寝室ももぬけの殻だった。

さっき見た武器弾薬庫にも誰もいなかった。


(武器も無いなんて海賊船らしくないな。みんな一緒に海に消えたとか? だったら嬉しい)

それでも私はキャプテンバッドの船長室を隈無く探していた。


その時、ベッドの下に唯一残された太刀を見つけ出した。

恐る恐る私は太刀を手にする。


この太刀は大勢の血を吸って来た筈だった。

だから自然に身構えた。


(凄い太刀!流石大海賊キャプテンバッド)


そう思いながらもその太刀を構えてみた。


(様になってる?)

自画自賛だけど、私はしきりと関心していた。


(何故?)

ふと疑問に思った。