花房君のことを考えながら仕事してたからか、いつもより遅くなった。

「咲ちゃんお先に!」
「はーい!お疲れ様です!」

私も早く片付けて帰ろう。

そう思ってキーボードをたたいた。

すると、ふわっと嗅ぎ覚えのある、甘い香水みたいないい匂いが近づいてきた。

振り向かなくても誰だかわかった。

後ろから伸びてきた手が私の鎖骨辺りでクロスされる。

「お疲れ様、咲子さん。」
「花房君…」

この間までは何ともなかった花房君のこの腕が、今日はなぜか嬉しい気持ちがこみあげてくる。

「今日のあれ、何なの?」
「え?あ、妹?ごめん、なんか咲子さんの話したら見たいって言い出して…」
「若い子にのりかえたのかと思った。」
「違うよ!俺、咲子さん一筋だから!」
「最近こーゆーのなかったじゃん…」
「いや、しつこいかなぁ…って…」

ギュッと腕が強くなった。

私はデータを保存してパソコンの電源を切った。

「咲子さん…俺、咲子さんのこと…」
「花房君のこと、好きだよ」
「え?は?えー!?何?え?や?なに?」

パニックになってる可愛い年下の男の子。

椅子をクルッと回して半回転させて。

今度は私が正面から花房君の首に腕を巻きつけた。

「だから、好きだって言ってるの。結婚してくれるんでしょ?」

ぱっちりと開いた大きな目。

その距離が近くなる。

心地よい花房君の香りと体温に包まれた。







おわり