「付き合ってないのにねー」

そう聞こえて振り返ると片桐君だった。
ちょっと面倒くさそうな笑い方。
イケメンにはもったいない笑い方。

「ヤス！なんで？」
「いや？悠里と麻子がここ入ってくの見えて珍しい組み合わせ！って思って。そしたら俺の話してるんだもん。」

もったいない笑い方で教室の中に入ってきた。
嫌な時間。
早くここから出たい。

「麻子ちゃん、あたしとヤスがお似合いだって！付き合ってるんだと思ってたって！」
「えー？悠里？ないだろ」
「はぁ？なんで？！」

ほっぺを膨らませて怒る花房さん。
そんな花房さんの顔に目も向けず片桐君は私の方に近づいてきた。

「俺は麻子で遊んでる方が楽しいけどな？」
「…何それ…」

私と花房さんの声がハモった。
あ、あり得ない…

花房さんはまた怒った顔で教室を出た。