10円玉、消えた

だが源太郎は全く懲りない。
翌日から夕方5時近辺に、毎日公園に訪れた。

パターンはいつも同じ。
ベンチに腰掛け、約30分そこから動かず、やがてボヤきながらバイクで立ち去る。

竜太郎が陰からコソ見してることはもうない。
時間の無駄使いとなった最初の張り込みで懲り懲りしたのだ。

幸子はあれからずっと店に出ていない。
客が入って来てもお構いなし。
完全にボイコット状態である。



「おい、ここんとこサッちゃん見かけねえな。とうとうゲンさんに愛想尽かしたか」

「実家に帰っちまったのかな」

「いや、そんなことねえよ。タマにここら辺で買い物してるの見かけるぜ」

「じゃあ店にゃ出てねえんだな。でもそんなの初めてだな」

「ああ、夫婦仲が相当危ないのは確かだ」

「もし離婚ってことになっちまったら、リュウちゃんが可哀想だぜ」

「そうだよな。特に年明けりゃ大事な高校受験があるってのにな」

「『らあめん堂』もどうなっちまうんだろ」

例によって、靴屋・煙草屋・菓子屋の店主の会話である。
すっかり商店街名物となった、ラーメン屋夫婦のバトルがこのところ音沙汰なしだったため、かえって皆心配してる様子だ。