「で、この10円玉をどうすればいいんですか?」

老人は相変わらずのニコニコ顔で説明する。
「親指でそれを強くはじいてなるべく高く上げる。次に落ちて来るところを両手で挟むようにして受け止める。その状態のまま、今度は右手を上、左手を下にする。そして最後は右手をパッと離す。左手に乗っている10円玉が、どっちの面になっているかで答えが出るんじゃ」

「なるほど。じゃ早速やってみます」
竜太郎は、早速10円玉を上にはじこうと構えを見せた。

「いや、ちょっと待った」
即座に老人は左の手のひらを向けて、竜太郎を制止する。

「何か問題があるんですか?」
肩透かしを喰らわされた竜太郎はやや苛立った。

「いやいや、問題ということではなくてな。それをやる前に君に言っておかねばいかんと思っての」

「はあ…何でしょうか?」

「出る面はあくまで二つに一つじゃ。その二つはわしの方で指定させてもらう。いいね」

「は、はい…」
占うのはこの爺さんなんだからダメも何もないだろ、と思いながら竜太郎は了承した。

「指定する二つは個人個人違うんじゃ。竜太郎君、君の場合はラーメン屋か会社員じゃな」

「えっ、そんな!」