10円玉、消えた

まるで引っ越しをするかのような部屋の様子は嫌でも目についた。

「すいません、なんか雑然としてて」

「いやいや、気にせんでよい。それより竜太郎君、決心が着いてよかったのう」

「“大事なこと”を思い出したからです。自分はホントは、ラーメン屋をやりたいってずっと思ってたんですよね」

「さよう、君は原点に帰ったんじゃ。じゃからいまの君は実にいい顔をしておる」

「この前は俺、三間坂さんにはずいぶんと失礼なことを言っって、本当に申し訳ごさいませんでした」

「いや、君がああ言うのももっともじゃ。わしゃただ君らを見ての、親子二代とも道を誤ったら気の毒だと思ってな。じゃがどれが正しい道なのかはハッキリとは教えられん。教えたら自分で決めた道ではなくなる。君がこだわったようにな。じゃからヒントを言うしかできないんじゃ」

「三間坂さんは誰にでもこういう“道案内”をしてるんですか?」

「いいや、自分の将来を真剣に考えて悩んでおる者にだけじゃ。君も31年前にそうじゃったろう」

「三間坂さん、これは一度是非聞いてみたいと思ってたことなんですが…。運命ってのは最初から決まってるものなんですか?」

「いや、違う」