コーヒーを飲みながら、二人は互いに近況報告をし合った。

薫の二人の娘は今年で高3と高1。
長女は母親と同じく地元の短大進学を志望しているとのこと。

竜太郎は離婚の件は一切伏せておいた。

「でもさ、久しぶりに会って言うのも何だけど、なんか元気ないよね、竜太郎」
薫が突然そんなことを言い出した。

「え、そうか?疲れてるからだと思うよ」

「そうじゃなくて、6年前飲み会で会ったときもそんな感じだった」

6年前といえば、部長になる前のバリバリに張り切っていた時期だ。
いまの自分ならまだしも、その頃ですでに元気がないとは。
竜太郎は首を傾げる。

「じゃあどんな風に見えた?」
竜太郎は薫に聞く。

「どんな風ってうまく言えないけど、仕事とかが余りうまくいってないのかなって思ったの」

「仕事は順調さ。三年前に部長に昇進したし」

「え、そうだったの?ごめんね、ヘンなこと言って」

「いや、別にいいさ。昔、薫は時々えってこと言ってたもんな。でも薫のカンは全部当たった。今回はわからんけどね」

「年取っちゃったからカンも鈍くなったのよ。だから余り気にしないで」

「でもまだ引っかかることがあるなら言ってくれ」