人影は外灯の光の範囲内に入った。
その顔と姿が露わになる。



あれ?
ま、まさか!



竜太郎の表情が笑顔から驚きに変わる。

やって来たのは、紛れもなく30年前に突然失踪した、父・源太郎であった。



「竜太郎、久しぶりだな。ずいぶん立派になったもんだ」
源太郎はそう言ってニコッと笑った。

竜太郎は驚きの余り体が固まり、声もうまく出てこない。
3年ではなく、30年ぶりなのだから当然だ。

それでも竜太郎はなんとか声を出す。
「げ、元気そうだな、父さん」

「まあな」

それにしても、もう80に近いというのにこの源太郎の若々しさは一体何なんだろう。
体型は長い年月を経ても殆ど変わっておらず、手足なども実にしっかりしている。
髪はさすがに薄く白くなり、顔も年相応に皺が増えているが、体の動きや耳・声は老人のものではない。
60代と言っても充分通用するだろう。

「まあ座って話そうや」

源太郎の言葉に竜太郎は黙って頷く。
二人はベンチに並んで腰掛けた。




親父はたまたまここにフッとやって来たのか?
いや、違うだろう。
ひょっとしてこれはあの爺さんがセッティングしたことなのかもしれない。