夕方5時近くになったため、竜太郎は『黒部サイクル』を出た。
そして例の公園に向かう。
ここ何年、帰省した際にも公園に立ち寄ったことがなく、まさに久しぶりのことである。



公園に着くと、竜太郎はベンチの中央部にどっかと座り、周囲を見回した。
そして、ここだけは殆ど昔と変わらないんだな、としみじみ思う。
まるで自分が15歳の頃にタイムスリップしたような錯覚を感じた。

草や木は、町内会のボランティアによって定期的に整備されている。
時代の流れにより町の様相が激変する中、この公園だけは昔のままにしておきたい、というみんなの願いが込められているのだろう。

さてと、ゆっくり待つとするか。
竜太郎は悠然とした気持ちだ。
なぜか彼には、必ず来るという確信があった。



10分経過…
まだまだ、もっと薄暗くならないと。

20分経過…
もうそろそろかな?

だが誰も来る気配はない。
辺りが薄暗くなり始めた。

30分経過…
もう時間の問題だろ。

暗さは一段と増し、例の頼りない外灯の光が目立つようになった。



今日は来ないのかな?
まあいいさ、明日も明後日も待つ覚悟だ。
親父だって一週間ほどかかったんだ。