そして3月、竜太郎の新しい旅立ちの時が来た。

「体に気をつけるんだよ」
幸子はそう言って、お金の入った封筒を竜太郎に渡す。
約3ヶ月分の生活費だ。

「母さん、これは一応貰っとくけど、絶対に仕送りなんてしないでくれよ。後は俺一人でちゃんとやるから」
と竜太郎が言った。

杉田とは軽い挨拶程度で済ませた。



黒部は餞別にペン一式を竜太郎に渡す。
竜太郎が礼を言うと、黒部はニコッと笑って肩をポンと叩いた。

「頑張れよ」
黒部の目にはうっすらと涙が滲んでいた。



新幹線のホームには薫が見送りに来た。
彼女は志望通り、すでに県内の短大進学が決まっていた。

「竜太郎、ホントにごめんね。私も一緒に行くはずだったのに」
薫は今にも泣き出しそうだ。

竜太郎は笑顔で言う。
「まだそんなこと言ってんのか、薫。もういいって。それより元気でな」

「う、うん。竜太郎も元気でね。手紙送るから」

「待ってるよ。じゃあな、薫」

竜太郎は上り新幹線に乗り込んだ。