「お久しぶりです、篠塚さん」

老婦人はアルのほうを向くと、丁寧に頭を下げた。

「こんにちは、アルさん。突然お邪魔して、ごめんなさいね。
近くまで来る用事があったから、久しぶりにお二人のお顔を見たくなって」 

「お変わりありませんか」

「おかげさまで、無事に暮らしていますよ。
あの時、あなたに助けていただいたおかげで・・・」

「いえいえ、私こそ篠塚さんにお客様を多数紹介していただいて、
感謝しています」

二人が互いに深々と頭を下げているところへ、
セイが冷えた麦茶と菓子を運んできた。

「篠塚さんが、お土産にわらびもちを持ってきてくださいました。
みんなで食べましょうって」

ちゃんと麦茶も菓子皿も、三人分用意している。

「ありがとうございます。お言葉に甘えて、みんなでいただきましょう」

兄の許しが出たので、セイは茶と菓子をテーブルにセットすると、
部屋の隅にあった予備の椅子を運んできてコの字型になるように置き、
ちょこんと座った。