「元気なモンよ。ナナコとかいう友達に全部しゃべって、
友達も昔のアンタのことを、ぜーんぶしゃべって」

夏海の様子を見に彼女の大学まで行っていたヒミコは、
学食の外で植え込みに隠れて聞いた二人の会話を、事細かに報告した。

「・・・ったく。世の中に『秘密』という言葉の意味を
理解している人間は、いないのかね。
セイのヤローも、よけいなことをあの子にしゃべりやがって」

ベッドに寝そべっていたアルはむっくり起き上ると、
ぼりぼりと頭を掻いた。

「まあ、いいさ。あの子が少しは元気を取り戻したようで安心した。
お姫様は王子様のキスで、深い眠りから目覚めたわけだ。

これなら、また週末にでも二人をあわせてやれるだろう。
ヒミコ、悪いが念のために、もう少しあの子から目を離さないでくれ」

「はいよ、どS王子様」

ヒミコは美しい翼を陽に透かせながら、ふたたび夏海の大学目指して
飛び立った。