「お願い、菜々子、その人を紹介して」

やっと元気をとりもどしかけた夏海の言葉に、
菜々子は頼もしげにうなずいた。

「ただね、報酬の支払い方がちょっと変わってるんだ」

「やっぱり、高いのかな?わたし、あまり高額なお金は払えない・・・」

「お金で払える人はそれなりの金額を、お金で払えない人は
何か大切なものを一つ、彼に渡すことになってるの」

何か大切なものを一つ?

「菜々子はどっちで払ったの?」

「ウチはお金がなかったから、あたしの大切なものを渡した」

「何を渡したの?」

菜々子はすまなそうに首を横に振った。

「ゴメンね、それは他人に言っちゃいけないの」

彼女が母親を亡くしたのは、たしか十歳のときだったと
夏海は聞いている。

十歳の女の子の大切なもの・・・なんだろう。