二人分のレモンバーム・ティーを運んできたセイは、部屋に流れる
どんよりとした空気にたじろいだ。

アルと夏海は向かい合って座ったまま、一言も口をきかない。
止まり木のヒミコは「あーあ」という表情で両者を眺めている。

そこらじゅうに、不機嫌なアルの超マイナスのオーラが漂っているのだが、
二十歳そこそこの傷ついた女の子に、ストレートに怒りを
ぶつけわけにもいかない。

行き場のないイライラが、アルと夏海の頭上でぐるぐると渦をまいていた。

「あの、どぞ」

セイがテーブルに茶を置いて、一言だけ夏海に声をかけて
そそくさと部屋を出ようとすると

「セイ!」

後ろから兄の鋭い声が飛んできた。

「はいっ!」

「今日はドアを閉めていきなさい。私が呼ぶまで、お前は
あちらで待機するように」

「はいっ!!!」

盗み聞きするんじゃねーよ、と太い釘をさされて、弟はすごすごと退散した。