「二人だったら、怖くないよ」

大翔はぽかんとして彼女の顔を見つめた。
夏海の口調は、まるでこれから二人で映画を見に行こう、とでも
言っているように落ち着いている。

「な、なに言ってるんだ。
あれに乗ったら、お前も死んでしまうんだ。わかってるのか」

「わかってる。
わたし、このままヒロ君のいない世界に生きていても意味がないもの。
だから一緒にいく」

「夏海・・・」

その時、突然、反対方向から別のバスが猛スピードで現れたかと思うと、
二人の前で急停車した。
夏海が乗ってきたバスだ。

バン!とドアが開いて、アルが足早に降りてきた。
これまでに見たことのないような、怖い顔をしている。

「そろそろ帰る時間です。夏海さん、乗ってください」

「いやです。もう少し、いさせて」

「だめです」

夏海の懇願をアルはぴしゃりとはねつけた。

大翔は呆然としている。