顔も声も、生きていた時の大翔とまったく変わらない。
これが本当に夢の中で起こっていることだとは、
夏海にはとても思えなかった。

彼女が落ち着くのを待って、大翔は唇を重ねてきた。
なつかしい感触が、会えなかった二か月分の空白を一気に埋めていく。

だが夏海は、大翔の唇が異様に冷たいことに気がついた。
そういえば腕も胸もひんやりとして、体温が感じられない。

――やっぱり、もう死んでいるのね。

唇を離すと、二人は海の家のベンチに並んで座った。
夏海は大翔の肩にもたれ、その肩を大翔がしっかりと抱く。
大翔は、アルが言った通り、彼女の顔が少しやつれていることに気がついた。

「夏海、ご飯ちゃんと食べてる?」

「うん、食べてるよ」

ウソをついているな、と彼は思った。もともと華奢な彼女の肩も、
いっそう細くなったようだ。

「夏海、カレー食べろよ。好きだろ?」

そう言うと大翔は彼女の手を引いて、店の奥へ連れて行った。