彼は目を開けて、スマホに送られた大翔の写真をもう一度眺めた。

恋人に大事な話を告げられないまま、あまりにも早く、
あまりにも突然に亡くなってしまったのだ。
そう簡単に納得して、あちら側へ旅立つというわけにもいくまい。

もしかしたら、死んでしまったことにさえ、
気づいていないのかもしれない。

再び目を閉じて、頭の中にある夏海の残像を追い払い、
意識を大翔に集中させる。



               *



遠くから波の音が聞こえてきた。

「どうやら、まだ死んだ場所にとどまっているようね」

耳元でヒミコの声がする。アルが目を開けると、
雲一つない空の下でキラキラと初夏の海が輝いていた。

静かに波が打ち寄せる浜辺を、一人の青年が
途方に暮れた様子で歩いている。
身につけているのは、ひざ丈のハーフパンツ一枚だけだ。