その数日前。

前期の成績発表を終えたばかりの大学構内は、
どことなく落ち着きがなかった。

学食でひとり昼食をとっていた藤原夏海の前に、
誰かがカタン!と、ランチセットのトレイを置いて座った。

「な・つ・みー。少しは元気になったかな?」

顔をあげると、学部で一番仲のいい坂崎菜々子が、
心配そうな顔でこちらを見ていた。
相変わらず、シックなブランドの服をさりげなく着こなしている。

よく高校生と間違えられる夏海は、自分とは対照的に大人っぽい
菜々子のことを、いつも羨ましく思っていた。

「菜々子、久しぶり。夏休みは楽しく過ごせてる?」

「うん、私はエンジョイしてるけど・・・夏海は相変わらず家にこもってるの?」

親友の言葉に、夏海は黙ってうなずいた。