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食事を終えたアルは箸を置くと、食事前と同じように
目を閉じて両手を合わせた。
「ごちそうさま。本当においしかった」
彼がミンチのひとかけらも残さず、
きれいに食べてくれたことに夏海は感激した。
「こんなにきれいに食べていただいて、嬉しいです。
もっとお料理が上手だったら良かったんですけど・・・」
「十分ですよ、夏海さんはいい奥さんになれます」
夏海がつぎ足してくれた番茶をすすりながら、アルが答えた。
料理は味つけも盛りつけも、こなれてはいなかったが
律義でキチンとして、いかにも彼女らしかった。
最初に薄いと感じた味噌汁は、最後の一口の中に
溶け残った味噌のかたまりが隠れていたが、
それさえ可愛らしく思えた。
空になった食器を彼女がすべて片付け、
テーブルの上が二つの湯呑と花だけになると、
急に二人は無口になった。
アルは黙って夏海の顔を見つめている。
夏海はその視線に耐えられず、左腕のブレスレットの石をさわりながら、
うつむいてコスモスの花を見ている。
おもむろにアルが口を開いた。
「夏海さん」
「はい」
夏海の返事が、高いかすれた声になる。
「そろそろデザートをいただきたいのですが」
