彼女は手紙を開いた。


   しばらくの間、これを身につけていてください。
   石の名前は黒っぽいのが天眼石、緑色がマラカイト、
   透明なのが水晶です。
   夏海さんを守ってくれます。             A.


すぐに夏海は、大翔につけられたあざが残る腕にブレスレットを通した。
天眼石の目玉のような不思議な模様に、
夏海を守ろうとするアルの強い力が込められているようだ。

そういえばアルも、似たようなブレスレットをつけていた。
でも、マラカイトの代わりに、もっと青みを帯びた石が使われていた。

「ヒミコちゃん、ちょっと待っててね」

夏海は小さなメモ用紙に短い手紙を書いた。

メッセージだけならメールのほうが早いのだが、
今はわざと遠回りしてみたい。
思いを募らせながら、手紙が彼にとどくまでの時間を待ちたかった。


   ありがとうございます。アルさんだと思って、
   肌身離さずもっています。
   今度の土曜日の夜、約束を果たしに行ってもいいですか。
                           夏海