「だーかーら!本当にいるんだってば!」
要と教室を出た後、階段前の廊下で数人の女子生徒がしゃべっていた。
八尋千夏。クラスメイトだが、ほとんどしゃべったことはない。見るからに気が強そうで目立ちたがりや。今の声もでかくて、かなりオーバーな感じだったことから、彼女だとわかった。
私が一番、苦手とするタイプだ。さっさと帰ろうとしたそのとき、
「あっ、要ちゃん!」
「あっ・・・どうも・・・」
要が捕まってしまった。どうやら、要も八尋に対して苦手意識があるらしい。捕まったことを後悔し、すぐに帰りたいと言いたげな感じだ。
そんな中、八尋の目は私の方に向いた。
「えっと・・・隣にいるのは・・・?」
はいはい。どうせ、学校にあまり来ない地味なヤツはクラスメイトでもわかんないよね。
自分が覚えられていないことにやや傷付きながらも一応、自己紹介しておいた。
「・・・白倉麗華です。」
「あー!白倉さん、ちゃ、ちゃんとわかってたよ!」
ウソつけ。多分、相手は初めて聞いた名前でさぞかし驚いているのだろう。9月からは名前だけでも覚えてもらえるように、ちゃんと学校に来れるようがんばってみようかなと思ったとき、誰かの手が私の腕に触れた。
顔をあげるとその手は要だった。口には出さなかったが彼女が何を言いたいのかはわかった。さっさとここを抜け出して学校を出よう。私はこの子が苦手なんだとテレパシーかのように私に一瞬で伝わった。
が、時すでに遅く、
「2人とも聞いて!・・・実はね、この学校、少し怪しいの!」
私達相手に千夏は話し始めた。