「うん。青龍も、白虎も朱雀も、夏はそれぞれの方角を守るのに忙しいんだよ。」


「……。」


「どうしたの?黙り込んで。」


 優也は真剣な顔をして、たずねてきた。


「お前友達、いないのか?」


「そのことに関しては答えたくありません。」


 あ~あ、夏休み早々、いやなこと思い出しちゃった。それでも優也は話し続ける。


「相談ならのるぞ。」


「…」


「話した方が楽になるから、話しなよ。」


うるさい。うるさいうるさいうるさい‼︎


「…うるさい。黙って。あんたみたいな人、嫌い。そういうふうに、正義感だけで人を助けようとする人大嫌い。私の気持ちなんて、誰にもわからないんだよ。

 私は、どんなにがんばっても、友達できないんだよ。なにも知らないころは、みんな友達になってくれるけど、悪霊が襲ってくると、『きもい』『奈津美ちゃんのちかくにいると、殺されちゃう』って言ってさけていくんだよ。普通の霊能者は隠して生きていくこともできるけど、霊力が強い私なんかはすぐに悪霊に追いかけられちゃう。」


 そこで一息つき、私はとても低い声で言う。


「出て行って。」


「いや、でも…」


「嫌いな人と、一緒にいたくない。

 はい、今日コピーしてきた、あんたの個人情報。」


 優也は、いやいやだったけど、出て行った。


 その日は1日、ボーっとして過ごした。