「お久しぶりです、閻魔大王。」


「そうだな。お前が忙しい忙しいと言うから、なかなか会えなかった。」


「しょうがないじゃないですか。受験があったんだから。」


ぷくーっとほおを膨らませながら言う。すると、「はっはっはっ」という、笑い声が聞こえてきた。影も、声に合わせて動いている。


「で、なんで今日はこんな忙しいときに会いたいなどという、無理な願いを言って来たのだ?」


優也には気づいてないのかな?


「閻魔庁の仕事を見せたいものがいてね。」


「ほう。それは誰だ?」


私は優也に、挨拶をするよう、促す。


「山田優也です。よろしくお願いします。」


「おお、そこにもう一人いたのか。」


「人じゃないよ、幽霊だよ。享年17歳。そろそろ成仏する予定だから、連れて来たの。もしよければ、手伝いぐらいなら、出来るんじゃないかなと思って。」


「はぁ⁈そんなの聞いてねえぞ!」


優也が文句を言ってくる。


「 当たり前じゃん。言ってないのだもの。」


だって、言ったらついてこないじゃん。どうしても連れて来たかったんだもん。


「それでは、今日も手伝ってくれるのか?」


閻魔大王のウキウキした声が聞こえる。


「うん。まあね。」


「俺はやらない。」


あら、断っちゃうの。


「いいのかなぁ。閻魔大王のお願いを聞かなくて。優也の死後の世界での暮らしは、ぜーんぶ、大王が決めるのに。」


ちょっとだけ脅してやった。本当は、閻魔帳に書いてある通りにしかできないのだけど。


「そうだぞ。死後の世界で幸せに暮らせるかどうかは、私の一存でどうにでもなるのだぞ。」


閻魔大王もノッてくれた。よし。これはいける。

優也をみてみると、怯えた顔をして、「や、やります」と言っていた。


「じゃあ、これとこれとこれをやってくれないか。」


「わっかりました!」


「うーっす。」


優也と私は一日、大王の手伝いをした。