「ははっ、意外と親しみやすいんだな。」


「わかってくれたんだったらいいよ。じゃあ、今からでもオーケー?」


「もちろん!」


と、いうわけなので、閻魔庁へといってきまーす!


「わぁーぷ!」


目の周りの景色が歪み、だんだんと周りの様子が変わってくる。


はっきりと周りが見える様になると、鬼たちがせわしなく動き回っているのがわかる。


「うわっ!」


優也が鬼に驚いていた。その声に鬼たちが気づき、近くにいた私にも気づいた。すると、一匹が近寄って来た。


「奈津実様ですか?」


「あ、そうですけど……」


いきなり話しかけられてびっくりした。


「すいません。大王は、ただいま手がはなせないので、わたくしがお迎えにあがりました。」


あ、だから、閻魔大王いなかったんだ〜。いつもなら、ここまで迎えに来てくれるから、戸惑っていたんだ。


「それでは、行きましょうか。」


「お願いします。」


「あ。お、お願いします。」


少し遅れて、優也も鬼に礼をした。


鬼の後に続いて歩いていると、優也が小さな声で話しかけて来た。


「お前、鬼が怖くないのか?」


「怖くないよ。悪いやつじゃないし。それに、小さいころから優しい鬼たちをみて来たから、怖い鬼っていうのを想像できなくて……。むしろ、『鬼=怖いもの』っていうのを、小さいころから聞かされてきたから、そんな風に思ってるんじゃない?」


私も小声で答える。

鬼は怖いものじゃないよ。悪い鬼なんて一握りだし、そういう鬼はもう捕まってるはずだから、悪霊よりも、よっぽど安全だもん。


「そうか。」


優也は納得したかしてないか、わからないけど、もう話し掛けてこなかった。


「ここです。」


鬼が立ち止まったところには大きなドアがあった。


久しぶりだなぁ。ここまでくれば、自分がどこにいるかわかる。ここは、閻魔大王の仕事部屋だ。


「ここまで案内してくれて、ありがとう!」


鬼にさらっとお礼を言うと、私はドアに手を触れて、「開けゴマ!」と言う。すると、ギギギギと重たそうな音を立てながらドアが開いた。


「たのもーー!」

私が堂々と入って行ったのに対して、優也は

「すみません。お邪魔します。」

と、いかにも改まった感じで入ってきた。


私たち二人が入ると、ドアはまた、重たそうな音を立てて閉った。


「来たか。」


部屋の奥の方で、影が動いた。