「なに食べたい?」


「えーなんでもいいー♡」


近くを仲のいいカップルが通った。


優也がそれを楽しそうに眺めていた。


「なに思い出してんの?」


「んー?昔は俺もあんなんだったなぁって。」


優也の頬を一筋の涙がつたう。


「あ、ごめん。なんでもない。」


裾でゴシゴシと目元をこすった。


隠さなくってもいいのに。だけど、気付かないフリをしてあげる。私が無理をさせちゃってるのだから。


「ん?何かあった?なんで謝ったの?」


「へへっ どこまわる?」


「綿あめ食べたーい!」


「子供かっ!」


「だって、食べたことないんだもーん!」


「相変わらず変な歴史を持ってんな。」


しょうがないじゃないか。変な能力を持ってんだから。


「まあまあ、ひとまず買いに行こう。」


綿あめ屋さんに行って綿あめを買った。


「大きいねーモコモコだね!」


「周りの視線を集めるし、子供っぽいから、その反応はやめろ。恥ずかしいから。」


「ふふふっ、ベタベタする。」


うれしいなぁ。たくさん話ができて。


そんなときだった。私の目の端っこに、黒い物陰が映ったのは。


あの霊は有害だと、私の本能が告げていた。


霊は、一直線にある人のたくさんいる方へ向かって行く。


優也が私の視線に気づいた。


「あれって……」


私は飛び出した。


「囲え!」


霊力を飛ばす。霊を捕まえた。


なんでこんなタイミングで出てくるかな?楽しみを邪魔しないで欲しいよー。


「さっさと消えろ。」


霊を締め付ける。だんだんと存在が薄くなって来た。しばらくすると、消えた。


「はあ、疲れた。あまりにムカついて、力を必要以上に使っちゃったじゃん。」


「大丈夫か?」


優也が心配そうに見つめてくる。


「大丈夫だよ。なんで?」


「だって、前は倒れたから……」


ああ、あのときか。あれは強かったなぁ。


「あれが珍しいの。あんな雑魚で私が倒れるわけないじゃん!」