「ばっかじゃないの?祭はみかさんが住んでる町からかなり離れたところだから。」


気にしない、気にしない。よしよし、嫉妬をしなくなったかも。


「そっか。残念。」


優也がショボンとした


「まあ、それはそれとして、会場に着いたよ。」


祭の会場はたくさんの人でにぎわっている。


うーん。やっぱり、毎年、うるさいなぁ。でも、今年は仕事じゃないから嬉しいかも!


去年までは、お母さんたちに頼まれて、祭に集まってくる、無害な霊たちの案内したり、巫女さんとして、出てたりしたから、祭を楽しめなかったんだよねー。


「じゃあ、さっさと実体化しますか。」


人混みに混ざる。これくらいにぎわっていたら、人が一人増えたくらいじゃ、わからないでしょ。


ささっと呪文を口の中で唱える。


「はい終わり。」


「いっつも思うけど、お前、なんて言ってるんだ?早口なのかわからないけど。全然聞き取れないんだが。」


そういえば、なんて言ってるんだろう?考えたこともなかったわ。もしかしたら、その場で生み出してるのかも。


「知らない。その場でなんとなーく言ってるから……もしかしたら、毎回、言ってることが違うかも?呪文というよりは私の意識の方が大切だからね。」


「はあ?そんなにてきとうでいいのかよ。」


「私、天才だから。それに、この呪文、使えるの私ぐらいだし。」


「天才となんとかは紙一重っていうの、本当だったんだな。」


え、なにそれ。


「遠回しに、私のことをバカって言ってる?」


「え?バカとは言ってないけど?」


うわー、とぼけやがった!


「いやいや、『天才となんとか』の『なんとか』って、バカって言うことでしょ!」


「♪〜〜」


優也が空を見上げて口笛を吹く。こいつ、逃げようとしてる!


まあいいや。しょうがない。


そういえば、初めて優也と会ったときも、私が諦めたなぁ。懐かしい。