夏は、悪霊が増えてくる。だから、悪霊祓いや悪霊退治を本業としている安倍家にとっては、稼ぎ時だ。


 まあ、私は、一人暮らしだから退治しなくても怒られない。だから、あんまり仕事はしないよ。


 だって、悪霊怖いし、めんどうだし、夜遅くまで起きてると、肌が荒れるっていうし。
 でも、やるときはやるんだよ!


 だって、よく親戚のおばさんに「なっちゃんでは、宝の持ち腐れだねぇ」っていわれるもん!


 と、いうことでサボってま~す!


 私が寝る準備をしていると、トントンっと、窓を叩く音。 私が気になってそこにいってみると、窓で顔がつぶれている幽霊がはりついていた!


 普通、とっても怖い様子だけど、顔がなんか残念な感じになっていて、逆に笑える。
しょうがないから、窓を開けてあげた。


その幽霊は、私の部屋に入ると、すぐ、

「あんた、誰?」

と、言った。


「それ、私のセリフでしょ!?」


「俺は、こういうものです。」


 幽霊は、名刺のようなものを差し出してきた。そこには、「山田 優也」と、書いてあった。よくある名前だ。でも、よく考えてみるとおかしいことがひとつ。


「なんで幽霊が名刺を持っているのよ!」


「ん?なんか持ってた。」


「ああ、そう。って、おかしいでしょ!?」


「まぁ、いいじゃん。それより、俺の名前を教えたんだから、お前も教えろよ。」


 ツッコミはじめたら終わらなそうな気配を感じ私はあきらめて、質問に答える。


「…安倍奈津美」


 すると優也は、

「よくできました!」

といい、頭をなでてきた。


「や、やめてよ!」


 私は、思いっきりはねのけた。だけど優也はニヤニヤしている。