夏の思い出

「おい、なんで不機嫌なんだよ。」


 朝一番、聞かされた言葉。私はそれを無視し、朝の準備を進める。


 あ、いいこと思いついた!


「ねぇ優也、これから一週間、私と一緒に優也の好きなところに行こうよ。」


「なんで?」


「優也はみかさんと会ったら、成仏するんでしょ。だから、それまでに楽しいこと、たくさんしようよ。」


 もちろん、こんな理由はあとから考えたもの。本当は優也と、デートみたいなことをしたかったのだ。


「おぉ、それはいい考えだな。」


 作戦成功!さっそく話を進める。


「じゃあ、今日はどこ行く?」


「じゃあ、水族館に行きたいな。でもなつ、お金足りる?本、買えなくなっちゃうよ。」


「だ、大丈夫。今月は買いたい本がないんだ。」


 お金のこと、忘れてた。ま、まあ大丈夫でしょ。お小遣いも入ることだし。


「でも、俺、見えないし、物もさわれないからつまらないよ?」


「あ、そのことは、大丈夫。私の必殺技でなんとかするから。」


 優也は、よくわからないような顔をしていたが、なにはともあれ、近くの水族館へ、電車で向かう。


 水族館の最寄り駅に着き、電車から下りると、近くの細い路地に入る。そして、優也に向かって、呪文を唱えると、優也の体が実体化してくる。


 その様子に優也は、目を丸くしていた。


「じゃあ、水族館に入るよ。」


 二人分のチケットを買い、水族館に入る。


 優也は、楽しそうにしていた。


 帰り道の電車の中で、ある女の子を見つけた。その子は、ツインテールでとてもかわいかった。でも、周りにいる子達は私より年上だったからおそらく年上なのだろう。そして、その子は何かを心配している、そんな顔をしていた。


 その女の子を見た優也は驚き、「みか!」と言った。そして、その子のところへ駆け出した。しかし、術を解いたあとだったため、みかさんにはみえない。


「奈津、さっきの術、もう一回かけろ!」


 優也がたのんできたが、無視をした。優也は、悲しそうな顔をした。