あの夏の向こう側--君と見た全国大会--






『ちょっ、先輩!何するんですか!?』

『お祝いだよ。これからは閖志がこの部を仕切ってくんだからな!』

『俺、自信ないです…。』

『そんな重く考えんなって!俺でもできたんだ。閖志なら絶対大丈夫だから!』




『おい、そーすけ!どうせなら最後に1on1しよーぜ!』

『いいっすけど…また俺が勝っちゃいますよ?』

『うるせーよ!やってみなきゃ分かんねーだろ!!』

『それもそうっすね。でも手加減はしないんで。』

『たりめーだ!』




『お前ってさー、やっぱ医者になんの?』

『そうなれればいいんですけどね。』

『大丈夫だよ、お前すっげぇ努力家だし。それみんな知ってっから。頑張れよ。』




『あーあ、あんたも引退か。』

『あんた、言うなよ。くれぐれも部活にはちゃんとでろ。あと、閖志たちにあんま迷惑かけんじゃねーよ?』

『なんであんたそんなに先輩達のこと買ってんの?』

『お前もだよ、赤夜。宗介たち含めお前らは今までの皇常バスケ部より断然つえーから。絶対全国行けよ?』

『…まぁあんたが行けなかった分ぐらいは頑張りますよ。』




『瀬月、お前もこっち来いよ。』

『え、あ……』

『遠慮すんな。チームプレーに学年なんて関係ねぇの。』

『は、はい!』

『頑張れよ、応援してっから。』





つい、5カ月前のこと。


体育館いっぱいではないけれど、それぐらいの人数がいるんじゃないかと思うくらいの笑い声が聞こえてきた3年生の引退式。


あんなにたくさんの人がいたのに、今はもう2人しかいない体育館。

私はただただ見てることしかできなくて。
あの時、どうすれば良かったのか今でも分からない。