あの夏の向こう側--君と見た全国大会--




去年は違うクラスで知らないことばかりだったけど、今年は同じクラスになって。
そして初めて閖志くんの人気が分かった。


閖志くんの人気は想像を越えてて、春は凄い驚いたな……。
賢いから、閖志くんの周りにはいつも人、人、人って感じで。



「で、お前はどこいってたわけ?」


「ちょっと用事。」


「だからそれ何って聞いてんの。」


「宗、女の子相手にその言い方はダメだって。」


「別にいいだろ、琴梨なんだから。」



そして私の頭をガシッと掴むと、そのまま私の髪をグシャグシャにしたのは桂木宗介(そうすけ)くん。
身長192㎝の無駄な長身で運動神経だけはいい、馬鹿な私の幼なじみ。

と、言っても中学校の頃は必要以上は全然喋らなくて、同じ高校だったことに出願の時に気づいて驚いたくらい。


高校は入学式から色々あって、同じバスケ部を選んだから必然的に話すようになったけど……
宗介くんとの関わりはそんなもので。

だから、私がそんな宗介くんを好きなことは誰にも言ってない。私だけの秘密。



「閖志、もっかい1on1しよーぜ。」


「えーやだよ。宗と1on1すると疲れるし。
しかもさっき、お前とはしたくないって言われたからね。」


「んなこと根に持つなよ。お前それでもバスケ部員か?」


「これでもバスケ部員だよ。」



「ふふっ」



タオルを持って立ち上がった宗介くんは閖志くんを指差しながら1on1を挑んで。
タオルを頭から被りながらそれを断る閖志くん。

そのやりとりが面白くてつい、笑ってしまう。